【倒壊注意】万年塀の危険サインと撤去・改修の選び方

「万年塀が古くなってきた」
「倒壊しないか心配」
このようなお悩みはありませんか?
万年塀は建設から50年以上が経過したものが多く、老朽化による倒壊リスクが問題視されています。放置すると所有者が損害賠償責任を問われるケースもあります。
この記事では、万年塀の基本構造や危険性から、撤去費用・工事の流れ・撤去せずに改修する方法まで詳しく解説します。万年塀の安全対策を検討する際の判断材料としてご活用ください。

万年塀とは?正式名称と基本構造

万年塀は、鉄筋コンクリート製の支柱と、その間に平板を差し込んで組み立てる構造の塀です。
1950〜1970年代にかけて日本全国で広く普及しましたが、現在では建設から50年以上が経過したものが多く残っています。

万年塀の正式名称と普及した時代背景

万年塀の正式名称は「鉄筋コンクリート組立塀」といいます。
当時は、耐久性・防犯性・プライバシーの確保を重視する住宅が多く、頑丈なコンクリート製の塀として広く普及しました。
しかし、近年は景観への配慮や倒壊リスクの問題から、新たに万年塀が建てられるケースは少なくなっています。

柱・板・笠木の3つの構成材と役割

万年塀は、大きく分けて「柱」「板」「笠木」の3つの構成材で成り立っています。
それぞれの役割は下記のとおりです。

構成材 役割
塀全体を支える支柱。控付柱・直柱・止柱などの種類がある
柱と柱の間に落とし込むコンクリート平板。並板・すかし板などの種類がある
笠木 塀の上部に乗せる仕上げ材。雨水の浸入を防ぐ役割を持つ

柱は地中に基礎を埋め込む形で設置されており、塀全体の強度を支える重要な部材です。
板は柱の溝に上から差し込んで積み重ねる構造になっており、現場での組み立てが比較的容易なのが特徴です。

JIS規格(A5409)上の規定内容

JIS規格とは、日本産業規格(Japanese Industrial Standards)の略称で、製品の品質や寸法などを国が定めた統一基準のことです。
万年塀はこのJIS規格において、「JIS A5409 鉄筋コンクリート組立塀構成材」として規定された工業製品です。
JIS規格では、柱・板・笠木それぞれの部材の寸法や強度が細かく定められています。
また、塀を設置する際の基礎の根入れ深さについても、JIS規格によって仕様が規定されています。

万年塀と混同されやすい塀との違い

万年塀と見た目が似ている塀は複数あり、混同されやすい傾向があります。代表的な塀との違いを下記の表で整理します。

項目 万年塀 コンクリートブロック塀 組積造の塀
構造 鉄筋コンクリート製の支柱に平板を差し込む ブロックを積み上げて鉄筋とモルタルで固める コンクリートブロック・大谷石・レンガなどを積み上げる
鉄筋の有無 あり あり なし
強度 高い 中程度 低い傾向
撤去費用 高額になりやすい 比較的安価 比較的安価

それぞれの違いについて、以下で詳しく説明します。

コンクリートブロック塀との違い

コンクリートブロック塀とは、ブロックを積み上げ、ブロックの間に鉄筋を入れてモルタルで固めた塀のことです。万年塀と比較すると、構造が簡易的で強度が劣る特徴があります。
一方で、施工コストが低く撤去費用も安価なため、万年塀に代わって多く用いられるようになりました。また、コンクリートブロック塀は建築基準法施行令第62条の8によって、高さ・壁の厚さ・基礎・鉄筋などの仕様が細かく規定されています。

出典:e-Gov法令検索|建築基準法施行令第62条の8

組積造(そせきぞう)の塀との違い

組積造の塀とは、コンクリートブロック・大谷石・レンガなどを積み上げて造られた塀のことです。コンクリートブロック塀との大きな違いは、鉄筋を使用していない点です。
鉄筋がないため、万年塀やコンクリートブロック塀と比較して強度が低く、地震や経年劣化による倒壊リスクが高い傾向があります。

万年塀の危険性|老朽化・倒壊リスクを正しく把握する

万年塀は1950〜1970年代の高度経済成長期に多く建設されました。その後、新たに建設されるケースは減少しており、現在残存している万年塀の多くは建設から50年前後が経過していると考えられます。
老朽化による倒壊リスクが問題視されており、下記の観点から万年塀が抱える危険性について詳しく説明します。

・建築基準法の規定外であるリスク
・経年劣化で起こる具体的な症状
・地震・強風による倒壊リスク

建築基準法の規定外であるリスク

万年塀はJIS規格(A5409)によって構成材の寸法や強度が規定された工業製品ですが、建築基準法上の明確な個別定義がなく、コンクリートブロック塀のような細かい仕様規定が適用されません。
そのため、鉄筋の露出など深刻な劣化状態であっても、罰則や強制的な行政指導の対象になりにくいのが実情です。ただし「建築物に付属する塀」として扱われる場合は建築基準法が適用されるケースもあり、自治体によっては安全性の改善を促す指導が行われることがあります。
いずれにせよ、法的な強制力に頼るのではなく、所有者自身が定期的な点検と適切な管理を行うことが重要です。

出典:e-Gov法令検索|建築基準法施行令第62条の8

経年劣化で起こる具体的な症状(クラック・鉄筋露出・錆汁など)

万年塀は年月の経過とともに、さまざまな劣化症状が現れます。代表的な症状は下記のとおりです。

症状 内容 放置した場合のリスク
クラック(ひび割れ) コンクリート表面にひび割れが生じる 雨水が浸入し、内部の鉄筋が錆びる
鉄筋の錆び・膨張 内部の鉄筋が錆びて膨張する コンクリートが爆裂し、鉄筋が露出する
錆汁の流出 鉄筋の錆が表面に染み出す 内部劣化が進行しているサイン
コンクリートの爆裂 膨張した鉄筋により表層が剥落する 倒壊リスクが高まる
笠木のゆるみ・落下 上部の笠木が経年変化で緩む 笠木が落下し、歩行者に危害を与える

これらの症状は放置すればするほど劣化が加速します。少しでも異常を感じたら、早めに専門家に相談することが重要です。

地震・強風による倒壊リスク

万年塀は柱と板が差し込まれているだけの構造のため、横揺れに弱い特徴があります。老朽化が進んだ万年塀は、地震や強風によって倒壊するリスクが高まります。
実際に、2018年の大阪北部地震では、倒壊した塀が原因で死亡事故が発生しました。また、万年塀ひとつ分(高さ約1.8m・幅約1.8m)の重量はパネルと笠木を合わせて約250kgにもなります。これが人の上に倒れた場合、重大な事故につながる危険性があります。
通学路など人が多く行き交う場所に面した万年塀は、特に早めの対策が求められます。

危険な万年塀を見分けるチェックポイント

万年塀は外観だけでは劣化状況を判断しにくい構造物です。下記のチェックポイントを参考に、ご自身の万年塀の状態を確認してみてください。

・柱の傾きや隙間
・コンクリート板・柱のクラック(ひび割れ)
・錆汁の流出や鉄筋の露出
・笠木の欠け・ぐらつき
・表面の変色・風化

ひとつでも該当する項目がある場合は、専門家による診断を早めに依頼することをおすすめします。

柱の傾きや隙間を確認する

柱が傾いていたり、柱と板の間に不自然な隙間が生じている場合、コンクリート板がばらばらに倒壊する危険性があります。傾きや隙間が確認できた場合は、早急に専門家へ相談してください。

コンクリート板・柱のクラック(ひび割れ)を確認する

クラックから雨水が浸入すると、内部の鉄筋が錆びる原因となります。軽微に見えるクラックでも内部では深刻な劣化が進行しているケースがあるため、コンクリート板の端部や柱の根元付近も注意深く確認してください。

錆汁の流出や鉄筋の露出を確認する

表面に茶色い錆汁が染み出している場合、内部の鉄筋がすでに錆びているサインです。錆びた鉄筋は膨張してコンクリートを爆裂・剥落させます。鉄筋が露出している状態はさらに危険度が高く、速やかに専門家へ相談してください。

笠木の欠け・ぐらつきを確認する

笠木とは万年塀の上部に取り付けられた仕上げ材のことです。欠けやぐらつきがある場合、落下によって歩行者に危害を与える危険性があります。手で軽く押してぐらつきがないか確認してください。

表面の変色・風化を確認する

表面の白華現象や黒ずみ・苔の発生は、劣化が進行しているサインです。風化が広範囲に及んでいる場合はコンクリートの強度が低下しており、倒壊リスクが高まっています。

万年塀が倒壊した場合の所有者責任

万年塀が倒壊して歩行者や隣地の建物に被害を与えた場合、所有者は民法第717条(土地工作物責任)に基づき、損害賠償責任を負う恐れがあります。この規定では、工作物の設置または保存に瑕疵があり他人に損害を生じさせた場合、占有者・所有者が賠償責任を負うと定められています。
特に注意すべき点は、所有者は過失がない場合でも責任を免れないとされている点です。「知らなかった」「相続で取得した」という理由は免責事由になりません。
実際に2016年の熊本地震では、倒壊したブロック塀により死亡・重傷の被害が発生し、遺族と被害者から塀の所有者に対して総額6,789万円の損害賠償訴訟が起こされ、刑事告訴も行われました。
万年塀を所有している場合は定期的な点検を行い、危険と判断された場合は早めに解体・撤去または改修を検討することが重要です。

出典:e-Gov法令検索|民法第717条
出典:日経クロステック|所有者は危険だと知っていた、遺族が問うブロック塀倒壊事故の責任

万年塀の解体・撤去費用の相場

万年塀の解体・撤去費用は、塀の大きさや周辺環境によって大きく異なります。ここでは、費用の内訳・費用が高くなるケース・補助金制度について説明します。

・費用の内訳
・費用が高くなりやすいケース
・自治体の補助金制度の活用方法

費用相場の目安(㎡単価・延長単価)

万年塀の解体・撤去費用は、塀の規模や現場の状況によって大きく異なります。参考として、一般的な単価の目安は下記のとおりです。

単価の種類 費用相場
延長単価(m単価) 5,000円〜15,000円程度

たとえば延長単価で計算した場合、長さ10mの万年塀であれば約5万円〜15万円が目安となります。
ただし重機が搬入できない現場や手作業が必要なケースでは、人件費だけで20万円以上かかることもあります。正確な費用を把握するためには、複数の業者から見積もりを取ることをおすすめします。

費用の内訳(人工費・産廃処分費・運搬費・現場諸経費)

延長単価5,000円〜15,000円/mには、下記の費用が含まれています。

費用項目 内容
人工費 作業員の人件費。万年塀は平板1枚が約40kgと重く、複数人での作業が必要なため高額になりやすい
産廃処分費 解体で発生したコンクリートガラの廃棄費用。万年塀は廃棄量が多いため費用が高くなりやすい
運搬費 廃材を2t〜3tトラックで処分場へ運搬する費用
現場諸経費 解体時に使用する工具の消耗品代・養生資材代など

なお、現場の状況によってはこれらに加えて重機回送費や隣地対応費などが別途発生する場合があります。

費用が高くなりやすいケース

下記のような条件が重なると、解体・撤去費用が高くなりやすいため注意が必要です。

ケース 理由
重機が搬入できない現場 手作業での解体となり人件費が増加する
隣地との間隔が狭い 作業スペースが限られ工期が延びる
塀が傾いている 丁寧な解体作業が必要となり施工費用が増加する
アスベスト含有建材が発見された場合 専門業者による処理が必要となり費用が大幅に増加する
万年塀のみの単体撤去 建物解体と同時施工に比べて割高になりやすい

自治体の補助金制度を活用する方法

万年塀の撤去には、各自治体の補助金制度を活用できる場合があります。現在、国が直接運用する補助金制度はありませんが、多くの自治体が独自の補助制度を設けており、万年塀も対象となるケースがあります。
補助金を活用するための一般的な手順は下記のとおりです。

STEP1:お住まいの自治体の補助金制度を確認する
補助金の対象条件・金額・申請期間は自治体ごとに異なります。市区町村の公式サイトや建築課・まちづくり課などの窓口で最新情報を確認してください。

STEP2:事前申請を行う
ほとんどの自治体では、工事契約・工事着工前に申請が必要です。工事を始めてから申請しても補助金が受けられない場合がほとんどのため、必ず事前に手続きを行ってください。

STEP3:交付決定後に工事契約・着工する
自治体から補助金交付決定の通知を受けてから、工事業者と契約・着工します。

STEP4:工事完了後に実績報告を提出する
工事完了後、定められた期日までに完了報告書を提出し、補助金の交付を受けます。

出典:国土交通省|ブロック塀等の安全対策について

万年塀の解体・撤去工事の流れ

万年塀の解体・撤去工事は、近隣への配慮や安全確保のために決められた手順で進める必要があります。工事の流れは下記のとおりです。

・STEP1:隣地立ち入りの許可確認と近隣へのあいさつまわり
・STEP2:養生・マーキングの実施
・STEP3:笠木・平板を上から順に手作業で撤去
・STEP4:支柱周りのはつり作業
・STEP5:重機による地中掘削と支柱の撤去
・STEP6:廃材の搬出・清掃・完了確認

なお、業者選定から工事完了まで全体で約1ヶ月程度かかるのが一般的で、撤去作業自体は1〜2日程度で完了します。

STEP1:隣地立ち入りの許可確認と近隣へのあいさつまわり

万年塀は隣地との境界線に建てられることが多く、作業時に隣地への立ち入りが必要になるケースがあります。事前に許可を得ておかないと作業範囲が限られ、工期延長や追加費用が発生する場合があります。また、騒音や粉塵が発生するため、業者と一緒に近隣へのあいさつまわりも行いましょう。

STEP2:養生・マーキングの実施

解体時に飛び散るコンクリートガラや粉塵が近隣に影響しないよう、撤去する万年塀の周囲をブルーシートで養生します。また、解体範囲を明確にするためのマーキングも事前に実施します。

STEP3:笠木・平板を上から順に手作業で撤去

まず塀上部の笠木を取り外し、コンクリート平板を上から一枚ずつ手作業で撤去します。平板1枚は約40kgと重いため、3人1組での作業が基本です。支柱より先に平板を撤去しないと板がバラけて危険なため、必ずこの順番で進めます。

STEP4:支柱周りのはつり作業

コンクリート土間に設置されている場合、支柱と土間がくっついているため、ダイヤモンドカッターや電動ピックで支柱周りの土間をはつる作業が必要です。

STEP5:重機による地中掘削と支柱の撤去

支柱の基礎は地中深く埋め込まれているため、重機で周囲を十分に掘削してから支柱を引き抜きます。掘削が不十分だと支柱が途中で折れ、基礎が地中に残ってしまうため注意が必要です。

STEP6:廃材の搬出・清掃・完了確認

コンクリートガラなどの廃材をトラックで搬出後、作業場を清掃します。施主と業者立ち合いのもと、隣家への損傷がないか・基礎部分まで撤去されているかを確認して完了です。

万年塀を撤去せずに改修する方法

万年塀の撤去には多額の費用がかかります。状況によっては、既存の基礎や支柱を活かして改修する方法が有効です。ここでは、撤去せずに改修する主な方法を紹介します。

・コンクリート板のみを撤去してアルミパネルに換装する方法
・支柱の傾きを修正して補強する方法
・板と柱の接合部を鋼板で固定する方法
・笠木を鋼板で覆って落下を防止する方法

※いずれの補強方法も応急的な対処であり、劣化が著しい場合は全撤去・改修を専門家に相談することをおすすめします。

コンクリート板のみを撤去してアルミパネルに換装する方法

既存の基礎・支柱をそのまま活かし、コンクリート板のみを撤去してアルミパネルに換装する工法です。
基礎工事が不要なため、工期短縮とコスト削減につながります。万年塀ひとつ分の重量が約250kgであるのに対し、アルミパネルは約35kgと大幅に軽量化できるため、倒壊リスクの低減にも効果的です。
アルミパネル換装工法について詳しく知りたい方は下記をご覧ください。

» 株式会社YUASA|八千塀で老朽化した塀が生まれ変わる

支柱の傾きを修正して補強する方法

基礎部分の施工ミスや地盤沈下などにより支柱が傾いている場合、傾きを修正したうえで補強する方法です。傾いた支柱を正常な角度に戻し、根元周囲をコンクリートで固めて安定させます。

板と柱の接合部を鋼板で固定する方法

経年劣化により板と柱の接合部にずれや隙間が生じている場合、鋼板を柱に取り付けて板の脱落を防止する補強方法です。鋼板は板ではなく柱側に固定することで、板を柱に引っかける形で保持します。

笠木を鋼板で覆って落下を防止する方法

経年劣化で緩んだ笠木は、落下すると歩行者に危害を与える危険があります。笠木全体を鋼板で覆い、支柱にボルトで固定することで落下を防止できます。

まとめ:万年塀の危険性を正しく理解し、早めの対策を

万年塀は建設から50年以上が経過したものが多く、老朽化による倒壊リスクが高まっています。建築基準法上の個別規定が明確でなく強制的な行政指導も受けにくいため、所有者自身が定期的に点検し、適切に管理することが重要です。
危険なサインが確認できた場合は放置せず、解体・撤去または改修を早めに検討してください。撤去には自治体の補助金制度を活用できる場合もあるため、まずはお住まいの自治体に確認することをおすすめします。
万年塀の改修を検討している方には、既存の支柱を活かしてアルミパネルに換装する「八千塀」という選択肢もあります。基礎工事不要で工期が短く、コスト削減にもつながる工法です。詳細は下記よりご確認ください。

» 株式会社YUASA|八千塀で老朽化した塀が生まれ変わる